ベル 優しいいきもの

やるせなくなって、ふてくされ、和室にこもっていた。ひとりになりたかった。畳に寝転んで暗い天井をにらみ続ける。それしかできない。細く開いた襖の隙間から、ベルが鼻先をのぞかせた。光と一緒にするりと入り、私の脇腹に潜り込む。もの言わずただ体をくっつけて丸くなる。部屋の外から家族たちがベルを呼ぶ声がする。もう寝る時間だから、行きな、と促しても動かない。首周りをなでてあげると、ぱたぱたとしっぽが畳を打つ。良い音。ベルー!と家族が大きな声で呼ぶ。ベルは和室を出て行くが、またすぐに戻ってくる。今、この家の中で誰が弱っているのかがわかっている。どうしてこんなに優しいいきものがいるんだろう。