文学フリマ つらつらと感想

文学フリマ東京37に出店した。2,000近いブースが2会場に分かれて並び、来場者数は1万人以上という大規模イベントだった。

私は9月に開催された文フリ大阪に先に参加していた。大阪は東京の半分ほどの規模だ。そのおかげでお客さんは事前に調べていないブースにも気楽に立ち寄り、立ち読みしたりお話しする余裕があった。本の説明をしたり、東京から来たんですよ〜と話したりできた。帰る間際に見本誌コーナーでみつけて、買いに戻ってきてくださった親子のお客さんもいた。嬉しかったです。

そして東京の感想。お、大きすぎる!まさに砂漠の中の一握の砂になった気分だった。人は絶えず目の前を行き来するので大阪より時間はあっという間に過ぎた。両隣りのブースは有名な方たちだったようで、絶えずお客さんが訪れていたが、私は割とのんびり。こんなに広いとお客さんは事前に調べたブースを回るので手一杯だろう。私も1人で出店していたので、始まってすぐにチェックしていたブースを回って買物を済ませ、あとは店番をしていた。もっとその場にいるからこその思わぬ出会いがしたかった。

こんなにたくさんのブースの中から見つけてもらい、お買い上げいただく。これだけで途方もない奇跡だ。ありがとうございます!他のイベントでスタッフだった方や知り合った方、友人の知人の方がわざわざ訪れてくださったのも嬉しかった。こ、こんな小さな小さな砂粒ブースにお越しいただき…卑下するわけでもなく、本当にありがたいなぁ、嬉しいなぁ、と胸が熱くなる経験だった。

初めて出店した時もそうだったが、周りの人が売れていようがいまいが、ほとんど気にならない。出る前は自分だけ誰にも相手にされなかったら惨めだ…なんて心配して不安だったが、いざ始まるとほぼ気にならなかった。なぜだろう?別に私の肝がすわっているから、ではない。むしろ小心者だ。とにかくイベントは始まれば終わるので、数時間は他人のことは気にせず周りの熱気や興奮に乗って淡々と楽しむ。それができたらもう精神的には大成功だ。1人でも立ち寄って買ってもらえたなら更に幸せ。ありがとうございます!楽しかったです。

しかし、あまりに大規模なので次も東京に出るかは悩みどころだ。私みたいな超初心者はもう少し小規模の方が参加しやすい。

今年は初めて本を作り、それを読んでもらうためにイベントに参加する、というのが目標だった。無事にいくつかのイベントに参加し、何人もの人の手に届けることができた。去年の今頃は、初めて文学フリマの存在を知り、お客さんとして来場した。楽しそうに本を作っている人たちを見て、いつか自分も本を作って出店してみたいな、なんて思っていたのだ。まずは一緒に出る知り合いを作って、それから本を作って…なんて考えていたが、いやいや、そんな悠長なことを言っていたらいつになるかわからない、1人でもやってしまえ!と決意して今日に至る。人間、やる時は1人でもやれるのだ。

今年の本に関する活動はひとまず終わった。今後はもっと文章力を高めるべく、励みます。

歩文舎コソコソ話③ 四苦八苦したZINE作り

印刷所に入稿するやり方は覚えたので、今度は自分で印刷して製本してみたくなった。コピー用紙に印刷してホッチキスで留めた、いわゆるZINEに挑戦したい。

肩の力を抜いて読んで欲しいので、文章も勢いにまかせてほぼ一発書きだ。大きさは文庫サイズにしたい。A4縦に文庫サイズの原稿を4枚面付けして上下で切り離せば文庫サイズになるはず。なんとか面付けを考えデータを作り、印刷して切ってみたら……変な余白が紙の上下にできてしまった!原稿の余白設定のせいなのか、原因はよくわからない。パソコンで原稿を作れば解決しそうだが、スマホで作りたかった。さらに文庫サイズ(A6)ではなくA5やB6だったらコンビニのコピー機の小冊子機能で面付けもしてくれる。いっそサイズを変更しようか悩んだが、やっぱり文庫サイズで作りたい。こじんまりしていてポケットにも入る文庫サイズこそ、このZINEのテーマ「気楽にあなたと話したい」にぴったりなのだ。

四苦八苦し、結局は縦式で文庫サイズのデータをつくり、画像としてcanvaに貼り付ける方法でなんとか文庫サイズの中綴じZINEが完成した。これより楽できれいにできる方法はあるだろうが、今の精一杯の力で作ったので、できあがったZINEはとてもかわいく思える。タイトルは『あなたと話したい いくつかのこと』にした。

印刷はリソグラフを使った。リソ機からシュポッ、シュポッと原稿が飛び出てくる姿は、ずっと見ていたくなる。印刷所にお願いした方が楽だけど、また懲りずに自分で作ってみたくなる。中毒性のある作業だった。

歩文舎コソコソ話② タイトル決め

『てのひらの散文』は日常のふとした瞬間を留めておきたくて書き連ねたエッセイ集だ。

10本のエッセイを書き終わり、それらを束ねるタイトルを考えた。覚えやすく、パッと見て意味が通じるような……色々と考えて思い浮かんだのが「てのひら」だ。手に載るほどささやかな場面を集めた文章たち、という意味を込めて『てのひらの散文』に決めた。

しばらくしてから、そういば川端康成に『掌の小説』という本があったことを思い出した。どこから読んでも楽しめる、かなり分厚い掌編小説集だ。川端康成の「掌」にあやかって私の「てのひら」も読んだ人の心に残ればいいな、とちゃっかり偶然の一致を喜んだのだった。

 

2冊目の『わたしの積読解消日記』というタイトルは一発で決まった。読書好きの主婦が、買ったまま読めずに積んである本の山を少しずつ読んでいく。書評でも読書感想文でもなく、日々の営みのかたわらに読書がある。そんな様子を記録したかった。

読み返すと、当時の生活と読んでいた本の内容が裏側で繋がっているようないないような、なんだか面白い本になった。

歩文舎コソコソ話① 本作りはボトルレター

今年の2月に初めて本を作った。

印刷所から段ボール箱が届いたとき、きゅっと胸が縮んだ。緊張と高揚。表紙を撫で、ページをめくる。あ、本だ。数日前は画面の上にしかなかった文章が、本になっている。この感動は病みつきになる。

本作りには文明の利器、スマホをフル活用した。少しでも時間が空けば「縦式」というアプリで文章を打ち、本文データを作った。表紙はcanvaというサイトでなんとか形になった。

周りに本作りをしている知人がいなかったので、全ての工程がネットの情報頼りだった。ネットの海に浮かんでいた情報は、まるで「あなたも本を作ってみなよ」と書かれたボトルレターのように私を導いてくれた。顔の見えない先人たちのおかげで、この世に一冊の本が生まれた。