なぜ不安障害になったのかというと、ざっくり言えば睡眠不足のせいだろう。
2019年当時、息子はもうすぐ2歳になるところだった。数ヶ月前に急に始まった夜泣きがとても激しく、私はすっかり疲弊してしまった。1歳までは、泣き出したらそっとお気に入りの毛布を握らせれば、ことんと眠っていたのに。下の子は育てやすいって本当だね〜、なんて呑気に笑っていた過去の私がなつかしい。
息子はある時、正確に言えば家族で訪れた台湾のホテルで、急に悪魔が乗り移ったかのごとく泣き喚いた。抱っこしようにも全力で抵抗されるので、手が出せない。右に左に上に下に、力の限り手足を振り回して転がり続ける。海老反りになって背中を布団に打ち付けている息子を、離れてただ見守るしかできなかった。恐ろしいのは、本人は眠っていて無意識なのだ。目はしっかり閉じられ、体だけが泣いて暴れている。息子が何かに乗っ取られた!本気でそう思った。そんな地獄のような時間が2時間ほど続き、こちらの体力が限界に近づいたころ、前触れなく静かになった。ぱつんと糸が切られたように眠りの幕が降りた。今までのは悪夢だったのか?息子の寝顔を覗き込むと、髪の毛は汗びっしょりで額に張り付いている。やっぱり現実なのだった。さらに不思議なのは、こんなに同じ部屋で大騒ぎされているのに、娘はちっとも目を覚まさない。一体、どうなってるんだ。この日から、息子の悪魔タイムは毎日のように続いた。
悪魔タイム以外、息子は静かに深く眠っている。日中も元気だ。問題は私の方だった。耳を貫く泣き声と暴れる手足がナイフとなって、私の気力の芯を少しずつ削いでいった。そしてある秋の夜、ついに最後の一皮が剥かれてしまった。